車いすについての取り組み


車いすについて正しく理解することは、本人・家族・医療介護スタッフ・販売業者すべての者に必要です。

この点を理解されていないと、車いすを原因とする高齢者の身体の変形・硬縮・褥瘡といった問題を発生させることになってしまいます。

他の機器と同じで正しく理解したうえで使うことができなければ、状況の改善・問題の解決にはつながりません。

弊社では “車いすについての誤解や間違った使い方” を解消していただけるような取り組みを実施しています。


車いすについての誤解と間違った使い方を解消するための取り組み


【通常の車いすには椅子としての機能はない] 

このことは意外と知られていません。

2本のパイプにシートを張っただけの座面と背もたれの椅子には健常者でさえ10分も座れば苦痛を感じます。本来は歩いて移動することが困難な方を【移動させる時だけに座ってもらう】ためにつくられたものを、長い時間【椅子の代わりとして使おうとする】ために問題は発生します。

体格に合った大きさ・座面の高さの車いすを選び、フットプレートの高さを調整する等は当然必要ですが、それだけでは問題の発生を防ぐことはできません。

 

【車いすは椅子ではありません。椅子の代わりとして使うのなら適切な対応が不可欠です】

左の写真は一例です。

上の写真の標準型車いすにラテックスフォーム製の座面・背もたれ一体型クッションを置いた状態です。

クッションが太もも・お尻・腰・背中の広い範囲で体を優しくサポートし体圧を分散することが可能になります。

このような対応をとることにより、はじめて車いすに座ることによる苦痛を改善し、車いすを起因とする身体的な問題発生の可能性を減らすことが可能になります。


リクライニング状態の車いす
リクライニング状態の車いす

【リクライニング機能についての誤解と弊害】 

 

リクライニング機能の目的は2つ

①通常の車いすでは座位を維持することができない方を【移動させる】ため (短い時間に限られる)

②股関節を90度近くまで曲げることができない方の背中と背もたれの角度を合わせるため

 

リクライニング機能を使うと2つのズレが発生 

①傾けた背もたれが上半身を下向きに滑らせ、下半身を車いすの座面から押し出そうとするズレ

②背もたれを傾けたり戻したりするときに上肢と背もたれの間で発生するズレ (背もたれの支点と人の体を傾ける時の支点の位置が違うため)


目で見る 【リクライニング機能】によるズレの発生 と 【チルト機能】 との違い 

チルトもリクライニングもしていない状態
チルトもリクライニングもしていない状態

通常の椅子に座るときの姿勢で、車いすの背もたれと人の体の接している位置に印をつけました。

 

この状態から

 

①車いすをリクライニングさせた状態

 

②車いすをチルトさせた状態

 

での体のズレの発生についてご確認ください。

リクライニング時の状態
リクライニング時の状態

←左の写真は車いすをリクライニングさせた状態です。

この時、2つの種類のズレが発生します。

 ①背もたれと人の体の支点の位置は違うため、リクライニングさせることにより接触面に必ずズレが発生します。

②傾けた背もたれはスベリ台と同じです。そのため重力で上半身が下半身を押し出そうとする力が常にかかり続けるためズレが発生します。

                                ↑ 上の写真の状態では健常者でも座り続けることはできません。

 

チルト(ティルティング)時の状態
チルト(ティルティング)時の状態

←左の写真は車いすをチルトさせた状態です。

 

背もたれはリクライニングさせていませんので、接している面にズレは発生していません。

 

また上半身が滑り落ちようとする力に対して、反対側から下半身が滑り落ちようとする力が加わっているため、力が相殺されてズレの発生を抑えてくれています。

                                  ↑  座る筋力の衰えを補うことができます。